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NHKスペシャル 白州次郎 全3話

過日、1話を観た話を書いたが、昨日今日で全部観ることができた。伊勢谷友介の眼力(メヂカラ)にはただ圧倒されるな。ホントに適役だったと思う。もともと全3話連続放送だったのが、1、2話を春にして3話が秋となったのは、彼の容態の悪化だったと聞いてたけど、もー大丈夫なんだろか。海外の映画にも出たりしてるから大丈夫なのかな…と書いて、さてどっちが先だったんだろう、と思ってしまった。彼の出演した『赤い月』も『キャシャーン』もいまひとつだったので(彼のキャシャーンに文句はない)、この役をやってくれてよかったー、と思ってしまった。ファンもそう思ってるのではないかな。

金持ち(成金)のボンボンとして不良時代を過ごし、「島流し」としてケンブリッジ大学に飛ばされるも9年在籍。英国紳士としての知識と教養を学び、父の急逝に伴って帰国したあとはその才覚を買われてやがて近衛内閣のブレーンのひとりとなる。政治と軍部を切り離すべきだという彼の想いとは裏腹に、時代はやがて開戦へ。まだ誰も「疎開」という言葉を知らなかった開戦直後、『やがて東京は焦土となる。そのとき不足するのは食料だ。自分たちの食い扶持くらいは自分たちで作らねば』と田舎の百姓暮らしを始める。英国紳士然とした立ち居振る舞いも、百姓して汗水たらし、労を厭わない姿もどちらも凄く素敵だ。この姿に惚れない女がどこにいるんだ?って感じ。
敗戦の色が濃くなった頃、彼は再び政治中枢へ呼び出され、「占領後の日本」を背負うことになる。
『戦争に負けても、外交で勝った例はいくらでもあるんだ』
という吉田茂の言葉を体言するように、GHQに「従順ならざる日本人」と言わしめ、怖れられた男。
『我々は戦争に負けたが、奴隷になったわけではない』
とマッカーサーに言い放つことが出来た日本人が、当時どれだけいただろうか。戦後の日本は、彼に救われたと言っても過言ではないと思う。彼が妥協しなかったからこそ、アメリカも姿勢を変えるしかなかった部分もあっただろう。

日米講和条約(占領国からの解放)締結のとき、吉田内閣のブレーンだった彼は、そのときの吉田の演説が「英文」で書かれてたことに『いつまで植民地根性を引きずるつもりだ!』と激怒し、翻訳させ、巻物を用意させる。つまり吉田茂はこのときの演説を「巻物を読む」形で進めたのだ。(チチにこの話をしたらば『有名な話だ』と一蹴されてしまった) 
だが、彼への世間の風当たりは半端ではなかった。『これからの日本に必要なのは貿易、外貨獲得』という言葉は反発を買い、日本を売った売国奴並みの扱い、仕打ちを受ける。それでも揺るがない彼の瞳と鉄壁さには畏怖を覚えるばかりだが、だからと言って彼の中に恐れや不安や孤独がなかったわけではないだろう。いや、むしろ嵐のように渦巻いていたかもしれない。だが彼はそれを見せなかった。感情を表に出すことを潔しとしない英国紳士のように、小賢しい言い訳や他者を貶めることは一切口にせず、己の責任において己の道を行く武士のように。

「大局を読める人間」は、「読めない人間」あるいは「読めると言いながらも読めていない人間」に嫌でも足を引っ張られる。それに負ける人もいる。あまりにも多くの人が、あまりにも多くの言葉を放つために背負うものが大きくなりすぎるのだ。
彼は信念を曲げなかった。常に「自分に出来ること」を問い、日本の進むべき道を見据え、『戦争を回避出来なかった自分たちには、この国の「糧」になる義務がある』と言っていた。鋼鉄の意志を持って、「良心」に従った男。数多の無念の涙、無念の死を背に、決して飲み込まれなかった男。そういう男が、いまどれだけ日本にいるのだろうか、と思わずにはいられなかった。まだまだいる、日本も捨てたモンじゃない、と思いたい。

あたしはあまりニュース映像というのを見ないのだが(新聞で足りてるので)、久しぶりに我が国の首相の顔を見た。大統領が来るってのに、目ぇ泳いでんじゃんか。大丈夫なのか、彼に舵取りやらせといて。そー思ってる人が大半らしい、ってのが問題だよな。首相は党首ではなく国民投票にすりゃー、まだ「自分たちが選んだのだから」って気持ちにもなれる気がするけどねぇ。
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by yukimaru156 | 2009-11-14 01:31 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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