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陸軍中野学校  1966年 日本

1938年に設立された、陸軍中野学校は、つまるところはスパイ養成所だ。士官学校を出た幹部候補生たちではなく、一般の大学の、つまりは「市井の青年たち」を諜報活動に従事するべく集められたのだけど、彼らも集められた意図を明確に知っていたわけではなく、成績優秀であることに目をつけられただけにすぎない。(志願したわけじゃないんだ!とちょっとびっくりした) 学校の存在は陸軍内部でも極秘扱いで、1年間のその養成期間は「家族や友人との接触不可、何をしているのか、どこにいるかも言えない」という、まさしく「スパイ学校」。映画はフィクションだけど、この学校はホントに存在した。

単純にスパイ養成とは言っても、その教育内容だけで眩暈がする。格闘技や銃火器の扱いや技術などは当然にしても、政治、経済、世界史、2カ国以上の語学から、変装術、錠の開け方、暗号解読、教養としてのダンスやギャンブル、果ては女性の扱い方まで、およそありとあらゆる術を身に付けることを前提とされ、これら全てが頭に入る人って何者だよ!と思ってしまう。そもそもの入学テストからしてすごい。入室するなりばっと白地図を拡げられ、『〇〇島はどこだ』『この地図にはありません』『地図の下には何がある』『ペン、鞄、灰皿、煙草…』とよどみなく答えると、煙草の銘柄まで訊かれる。『まとめて質問する。順に答えろ』の質問がそれぞれ何の脈絡もなく、そして延々と続いたりもする。これに合格するのって、もー既にスパイの資質があるよなぁ。

集められた精鋭たちは18人。自分たちが諜報活動をすることにためらいつつも、明治維新を成し遂げたのも君たちのような若い青年だった、日本の未来のために必要なことを成して欲しい、という所長の熱弁に感化されてく様子は、その後の世界大戦を想うと切なくもなるのだけど、陸軍内部でも賛否のある、むしろ否定的な存在だったこの中野学校の生徒が格段に優秀だったことは確からしい。(士官学校の生徒は「軍人としての教育」が先立ってしまうので、民間に紛れ込んでもすぐばれる、という理由から外れたのだそうだ)
市川雷蔵主演のこの映画は大ヒットし、以降、5本の続編が作られた。行く先も告げぬまま、忽然と姿を消した婚約者(雷蔵)を探し、ごく普通のタイピストだった女(小川眞由美。好きな女優の1人だけど、ホントにキレイだ)は、消息を得ようと陸軍に勤務する。そして彼が銃殺されたことを知り、陸軍を憎むあまり、アメリカに情報を流すというスパイ活動に従事するようになる…知らないうちに婚約者を追い詰めてしまった彼女と、非情な決断を下さざるをえない男…昨今の映画だったら、このあたりの情感をもっとたっぷり描くのだろうけど、さらりと流してしまうあたりがまた何とも言えない。

見終わったあと、ハハが『ホントにあったのかしら』とかゆーので、ルバング島から(いまちょっと調べたら1974年に)帰還した小野田少尉はここの卒業生だったんだよ、と教えてあげた。戦後、これだけの長期にわたって誰に捕まることもなく生きてこられたのは中野学校生だったからだ、と言われてる。どれほどの呼びかけにも投降せず、最後はこの中野学校の卒業生が島で大声で校歌を歌ったのだ、と。誰に聞いたんだっけかなぁ。テレビでだったかな。

今日はそば屋前にハハとまったりと映画観て(ちょっと前にCSでやってたのを録画したのだ)、それから出勤。そして再びの欠員で、“やってらんねーや!”と発狂しかけた。後半シフトを見てさらに発狂しかけた。ホント、マジでやってらんねーっす…。
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by yukimaru156 | 2012-09-12 02:38 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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