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帝都物語 全12巻  荒俣宏 著

明治40年から昭和70年代(!)までの東京を描ききった、発表当時はみんなの度肝を抜いた怪奇伝奇長編だ。途中、違う本やマンガを読んだおかげで2ヶ月近くかかってしまったけど、ともかく読み切った…ふぅ。途中しんどくて、何度か挫折するかと思ってしまった。(つまんなくて、とゆー意味ではないのだけど)

映画になって、嶋田久作の怪演(つかあまりにもぴったりすぎで彼以外に誰も思い浮かべられない!)も話題になり、ちょっと読みたいかなと思いつつ、この冊数に引いてたのだけど、機会あってやっと読むことが出来た。(ありがたう、BQ!) 
いまでは小説でも漫画でもメジャーな存在となりつつある「式神」という存在を初めて登場させた小説だとも言われてる。これ以前になかったことの方が不思議だけど。裏日本史的なもの、陰陽師(道)、蠱術、魔道、魑魅魍魎の類から風水、卜占、秘術、その他古今東西のありとあらゆる「不可知であるにもかかわらずその名を知られてるもの」全てがぶちこまれてる作品。さすがの博物ぶりで、何とゆーか、失礼を承知で言わせてもらえれば「小説家ではない」気がしてしまった。物語の展開とか流れ方とか、人物造形とか。そもそも主役は誰だろ、みたいな?

加藤保憲が全編に渡って登場し、東京を壊滅させるべく、日本だけでなく中国まで渡って(あるいはそれ以外の地域でも。ともかく神出鬼没に)暗躍する。その執着ぶりには逆に「なぜ?」と訝ってしまうのだけど、それは置いとくとしても、キモチが彼の方へはいかないので、必然的に彼に対する「誰か」に行かざるをえない。にもかかわらずその「誰か」が目まぐるしく変わるので何とゆーか「感情移入すべき者の不在」が「読んでてしんどくなる」所以。あくまでも個人的感想ですからね。
明治40年から始まるこの物語は、実在の文士たちが大勢登場する。中でも幸田露伴はなかなか魅力的なのだけど(彼の著作を1冊も読んだことがないのが悔やまれたほどだ)、加藤相手に善戦してても退場するときは拍子抜けするほどあっさりで、その善戦が継承されることもなく、この人物ならばと思わせる人を効果的に登場させても、去らせるときはにべもなくて、おいおいおいおい…と突っ込みたくなる。作者は物語の展開と溢れる知識をいかにわかりやすく並べるかとに終始して、人物に対してはさほどの執着を持てなかったのでは、とさえ勘繰ってしまった。三島由紀夫あたりはまだ「想い入れ」が伝わってくるけどね。終盤に登場する角川春樹に至ってはタメ息と失笑がもれる。加藤の娘(のよーな、そーでもないよーな…)なんて、さぞかし活躍してくれるんだろーと思ってたらただの狂言回しで終わってしまったし。んーむ。ちぃーとばかし期待しすぎたのかもしらん。

とは言え、日本の近代史をおさらいするにはちょーどいい感じで(どんだけ加藤が関わるんだよ!てなモンですが)、決して悪くはないのだけどね。関東大震災なんて(加藤が地脈の竜を殺したためとなってる)、本当にこんな状態だったんだろうなぁ、と教科書よりずっとリアルに読める。おそらくはどんな状況だったかをすごく丁寧に調べ上げた結果なんだと思うけど。
ことの発端は平将門、かと思いきやそれよりずっと遡るので、「どこから」なんてのはないに等しいようなものなんだけど、ラストは“何だ、そこに行き着くのか”でおしまい。ちなみに10巻。(11、12巻は番外編みたいなもんで、「時代の要望に応える」なんてちょいとイイワケがましい補足的内容、つか、単に「語りきれなかったことを書いた」だけな気がする。加えてこのあと「帝都大戦」が何巻か出してるしね) 最後に“え、そーだったのか!”とはなれずに残念。何かね、あーこれしかないよね、みたいな気分なんだよねぇ。いや、「ええっ」な人もいるのかもだけど。

最後に蛇足ながらひとつ。
平将門の首塚近くにある官舎は、どの部屋の机も妙な方向を向いてる。ものすごく使いづらくて、配置を変えたいと願っても絶対NG。なぜなら「首塚に背を向けて座ることは不可」だから。日当たりが悪かろうが何だろーが、ともかくダメ。これは官舎に勤めてる友人から聞いたホントの話。つっても20年以上昔の話だからね、いまはどーか知らないけど。
あー疲れた。読むのも疲れたけど、12巻の感想書く方が疲れる…つか、感想になってるのか、これ?
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by yukimaru156 | 2013-06-29 01:36 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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