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  グレース・オブ・モナコ 2014年 米・仏・伊・ベルギー

ハリウッド女優からモナコ王妃へと華麗に転身したグレース・ケリーの半生を描いた、「史実に基づくフィクション」。最初にそう断られてる通り、たぶんいろいろ創作もされていると思うし、もしこれが真実なら彼女はあんな悲劇的な結末を迎えなかっただろう、というのが正直な感想なのだけど、これはこれで悪くなかった。

人口3万人程度の小国で、軍隊も持たず、フランスの恩恵なしには存続できない国、モナコ。もしオスカー女優でもあるグレースがモナコ大公レーニエ3世と結婚しなかったら、モナコがでこにあるのかさえ知らなかった人が大勢いただろう。
物語は彼女が既に嫁いで数年後から始まるので、レーニエとどんな出会いをしたのかとか、互いにロマンスだけでない打算や思惑があったのかどうかなどはわからないままだ。ただ、欧州で最も古い王室(ということをここで初めて知った)での、孤独で窮屈な暮らしに対する閉塞感や、突然訪ねて来たヒッチコックの映画の主演依頼に心動かされる冒頭から、彼女の心情はひしひしと伝わってくる。そして大公レーニエの苦悩。当時、アルジェリア紛争によって財政難に苦しんでいたド・ゴールは、「フランス企業であれば課税なし」という特権を廃止して徴税、そしてその税金を納めよとレーニエに迫る。ド・ゴールに逆らえない欧州、静観を決め込むアメリカ、国連未加盟であるモナコに味方はなく、国境封鎖、武力衝突手前まできてレーニエは窮地に立たされる。加えて極秘裏に進められていたはずのグレースのハリウッド復帰の漏えい、そして王室内の裏切り。

正直な話、グレースにばかり焦点が合ってる映画だと思ってたので、1960年代当時の時代背景や、他国への依存なしに生きられない小国モナコの現状、レーニエ大公の苦悩などが描かれていたのはよかった。グレースを『宝物なのかお荷物なのか』とぼやくレーニエではあるが、『政治利用しないで何のための結婚か』と迫られれば不快感を示し、『なぜまだモナコにいるんだ』と言いながら『君に苦労をかけるつもりはなかったのだ』とつぶやく。すれ違い夫婦の典型みたいな2人だったのだけど、サブタイトルの「王妃の切り札」をグレースが切ったときのレーニエの反応に“あぁ、2人はちゃんと愛し合ってたのだな”、とちょっとほっとしたりした。
グレース演じるニコール・キッドマンばかり称賛されてるけど、レーニエをティム・ロスが演じてくれたことの方があたしは嬉しい。ちょっと太った? と思いながら観てたのだけど、ハハいわく『本人はもっと太ってた』とゆーことだったから、これは「役作りの上」でのことなのだろう。中年になってもいいなぁ、ティムは。
『マリア・カラスも似てなかったわね、ヒッチコックも海運王ネメシスもド・ゴールも似てたのに』とハハは言ってたから、当時を知る人たちにとっては見方がまたちょっと違うのだろな。
映画は、グレースの最期までは語らない。これが真実ならあの事故は何だったのだ、と言いたくなるが、映画は映画として観るもの、てことなのだろう。しかし4国合作のこの映画、当のモナコはどう見てるのかね。そっちもちょっと気になった。モナコ国民にとってグレースって最後まで「元女優の外国人」だったんだろか。

ハハと帰宅中の駅の売店で高倉健の訃報を知った。びっくりした。(おかげでハハと映画の感想を語り合う機会を逸してしまった) 生涯で出演した映画は205本だそーだ。遺作となった『あなたへ』は観たけど、『鉄道員』や『単騎、千里を走る』は観てないんだよなぁ。任侠モノは結構観てるんだけど、主演として思い浮かぶ作品は『野生の証明』と『海峡』かな。私生活を見せず映画人生を全うした、いい俳優だったと思う。合掌。
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by yukimaru156 | 2014-11-19 02:04 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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