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『甘い人生』

05年 韓国
「韓流」という言葉が巷に溢れ出した頃に来た映画で、タイトルとは全く逆の、「ちっとも甘くない人生」だ。イ・ビョンホン主演てことで騙された!と思った人も多いのだろーと思う。あたしはおおよその内容は知ってたので「そりゃ甘くないだろな」と思って、だから観たいと思っていた。
表向きは一流ホテルの支配人の片腕だが、ウラの顔は暗黒街のボスと、腕利きのナンバー2。スーツをびしっとキメた「武闘派」で、涼しい顔してめっちゃ早い飛び蹴りをまっすぐ決めるあたりにココロ揺さぶられ、頬緩みっぱなし(放っといてちょーだい)。
「公私」の「私」の部分が欠落したような男が、ボスの若い情婦の見張りを言いつけられ、『男がいるようだったらカタをつけろ』と命令される。(これがハリウッドだったら「見張りの男と哀れな情婦が惚れあって逃避行」になって「無事逃げおーせる」というワンパターンに陥る(はず)) 懸念通り女には情夫がいて、ふと情けをかけて逃がすところから、順風満帆だった男の転落が始まる。このあたり、相当きつい。これから観ようと思う方はお覚悟あれ。

どんな形であれ、暴力を描く映画には、「血糊の美学」が存在するとあたしは思っている。ンなこと言うのはあたしだけかもだけど、欧米の映画と香港や韓国、そして日本ではその描き方が違うと思うのだ。生々しいとかリアルという問題だけではなくて、例えば白い壁に飛んだ血飛沫を撮るか撮らないか、どこから撮るか、とか。欧米だのアジア圏だのとは関係なく監督のこだわりのようでもあるけど、やっぱり微妙に違う。邦画のそれは「血糊くっつけてます」的な感じで“その程度でそこからそんなに血は出ない”という突っ込みが役者の演技を台無しにしてることすらある。一方、欧米だと格闘やナイフより先に銃になる歴史のせいか、血糊そのものに重点が置かれることがあまりない。どちらの映画も「リアルな血を描くことで生々しい暴力描写になることを意図的に避けてる」気がする。韓国映画は避けない。意図的に避けてないふしもある。

あたしはスプラッター映画は苦手だ。ここまで書いておいて何だ!と思うだろーけど、そーなんだからしょーがない。血糊は噴き出せばいいわけじゃあない。頭から血を流し、痛みを押し殺しながら眼光鋭く相手を見つめ返す、その「反撃一歩前」を観るが好きなのだ。逆転できるにせよ、できないにせよ、「死の淵ぎりぎりに立つ男の美学」にシビレるのだ。

この映画は説明不足な部分も多い。なぜ清純な音大生にしか見えない女の子が情婦やってるのかとか、男がなぜ、いかにしていまの地位につき、「忠実な犬」をやってたのかとか、そこにいたるまでの過去とか、ボスはなぜそこまで執拗に部下を貶めるのか、とか。多分こうなのだろう、という推測の域を出ないが、それでいいのかもしれない。
ラストに「甘い人生」とされたタイトルの意味がわかる。ここで書いてもいいかと思ったが、やめておく。ネタばれでも何でもないけど。ただ、切なく痛い。
あたしはイ・ビョンホンのファンではない。というより、まともに観たのはこれが初めてだ。で、どうだったかと言うと、「意外に悪くない」。殆ど笑顔のない役だけど(「韓流スター」として振舞う笑顔は新庄をホーフツさせるといつも思ってた)、泥だらけもヨレヨレも泣き顔もイイ男だった。ファンが多いのもわかる。

ところで今日は何をしてたかとゆーと、ジダラクな日でした。
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by yukimaru156 | 2007-05-29 01:00 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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