二つの月の記憶 岸田今日子著
岸田今日子の小説、というのはもーかれこれ15年以上前に『ラストシーン』という短編集を借りて(薄い文庫なのに20本近くも短編が入ってる!)、ちょっと感動して改めて買った。(この友人もある人から借りて読んで買い、あたしがこれを貸した友人も気に入って改めて買ってる…きっとすごく売れてるに違いない)
岸田今日子は「怪優」だと思う。(こう書くといささか語弊があると思うけど、好きな女優さんのひとりでもあるので許されたし) 観ていてドキリとするような一瞬を作れる稀有な人で、演技力だけではない存在感で魅せることができる、というか。私生活については殆ど知らないけど、「そういう人」が書く小説(しかも父上は有名な劇作家、姉上は詩人)って、“こんな感じじゃないか”と思う、その通りのものだった。うーん、うまく説明できないけど…つまりさ、何でもない日常に入り込む「何か」を小説家は手を換え品を換え書くわけだけど、その「何か」に毒を入れるタイプだろな、ということだ。エスプリ、と書くとちょっと上品だし、シニカル、と書くとちょっと斜に傾いてる気がする。ブラック、とも一味違う…毒、だろな。
小説の帯に、佐野洋子氏の絶妙なコメントが入ってる。
「かけがいのない快楽には、少し毒のあるユーモアと、不思議な愛と、エロスが必要です。今日子さんをそのまま食べてください」
そーなんだよな。彼女の本て(冊数としては少ない。あたしはこれを読むまで『ラストシーン』しか知らなかった)、やっぱ毒なんだ。致命傷には至らないし、中毒にもならないけど、触れて初めて“あ、これ毒なんだ”と気がつくような。食べても平気だけど毒なんだよね、というか。
本書には7本の短編が入ってる。その日のうちに読了できるものばかりで、難解さはない。毒も少ない。(このあたりは『ラストシーン』の方が強いかもしれない) それでも彼女のかもし出す独特の雰囲気同様、不思議な香りがする。「オートバイ」は愛しいし、「P夫人の冒険」はエロス以外の何モノでもない。P夫人てブタのことなんだけどさ。一番彼女らしい気がしたのは「逆光の中の樹」かなぁ。いや、やっぱ「P夫人」かな。
今日はチャリで100均に出かけた。もしやと期待しつつ、でも8割方ダメだろなと思って店員さんに調べてもらったら、やっぱり廃番だった。ガラスタイル。これが廃番てことは、もーガラスタイル豆本「Simle Words for You」が作れないってことなのだ…意地でも作るけどさ。でも表紙を換えなくてはならないし、代替品として考えてちょっと作ってみたモノはやっぱりイカンかった…凹む。100均は扱う種類がべらぼーにあるから、廃番も多いし早いんだよねぇ…う~ん。在庫のある店を根気よく探すつもりだけど、それでもその場しのぎにしかならないよな。あのタイル、気に入ってたのにぃ~!