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借りぐらしのアリエッティ

10年 日本
世界に誇るアニメーションスタジオはいくつもあると思うのだけど、「自分はオタクではない」と思う日本人はジブリ作品を「ナンバー1にしてオンリー1ブランド」として考えてる傾向があるように思う。いや何となくなんだけど。作品そのものに対する評価ではなく、CMやグッズ展開の仕方、そして劇場の混雑ぶりとかを見るとね。「乗せられて乗ってる」感じ?

人間たちの居住空間で、「人に見られないように生きる」小人たち。彼らはそれを「借りぐらし」と呼ぶ。人に見られてはいけない、なぜなら人は危険だから。まぁ、否定できないやね。「世界中で、誕生しては滅んでいった種族のひとつにやがて入る」としても、彼らは彼らなりの理屈と正義とで生きている。
劇中、何度か「借りてる」という台詞が出てくるけど、何かその度に「じゃいずれ何かを返してくれるわけ?」と思っちゃうんだよね。それがたかがティッシュ1枚、角砂糖1個、ミントの葉1枚だとしても。「小人は小人」で、魔法使いでも妖精でもない。だから、例えば人が災難に遭ったとしても、「借りを返す」形で何かしてくれるわけでもない。つまり「搾取するだけの存在」なのに、「人は危険」て、あんたたち何様よ?と思う。感謝のカの字もないわけ?これがラストまでまんま引っ張られるので、ぬるい脚本だなぁ、と思ってしまった。脚本は宮崎駿、監督は新人の米林宏昌。どっちがどーとかじゃなくて、たぶんどっちもよくない。世界が固定されていない上、小人視線も少年視線も半端で、ありがちな展開に輪をかけて台詞は陳腐で迫ってくるモノがない。何より、底か浅い。どこにも奥行きがない。って全否定かよ?いや、絵はキレイなんだけどね。あの庭もさ。

ふとしたことから小人を「見て」しまう少年、ショウは(この名前もよろしくないな。語感として)、心臓を患っていて、1週間後に手術となる。にもかかわらず、離婚した父は会いに来ず、母は仕事で海外出張。なので祖母宅に来るのだけど、この祖母もしょっちゅう出かけてる。あたりが理解不能。「この家には小人がいる。見たことはないけどいる」と息子に教えた母親が、大事な手術を前に海外行くか?ショウは(何歳設定か知らないけど14、5歳あたり?)、小人が実在したことに対する喜びとか驚きとかもスルーに近くて、
『滅ぶのは自分の方だ、手術はうまくいかない』
みたいな諦めに支配されてるとゆーか、既に人生に失望してる感じ?それが床下で借りぐらししてるアリエッティによって「自分もがんばって生きていこう」と希望を抱くまでになるなら、そこに重点を置いてきっちり描いてもらわないと…ねぇ?
見せ所のひとつでもある、小人たちの暮らしぶりも、ミニチュアってだけで“それはどうやって手に入れた、モトは何よ”みたいな突っ込みいっぱいだしさ。

こないだ、ガキの頃大好きだった『ガンバの冒険』をCSでやってるのをたまたま目にして、せっせと岩山を仲間たちと登ってるシーンだけで“あ、これってあたしの好きな山男の話だ”と思って最後までしっかり観ちゃったのね。(アレだけで的中させたあたしもすごいと思う) 
山男が山小屋で、日誌に仕事のきつさと孤独を書き綴っているとき、仲間とはぐれて手負いとなったガンバが食べ物を探してやって来る。彼にとって人間は「モノクロででっかい動く山」に過ぎず、見つかってひたすら逃げる。逃げて逃げて、やがて力尽き、倒れたところで山男に捕まってしまうのだけど、山男はガンバにキズ薬を塗り、バンドエイドを小さく切って手当てをしてやり、目覚めたガンバにスプーンでシチューをあげるのだ。こわごわと「山」を見上げ、そしてシチューを食べ、快復するガンバ。男は日誌に記す。
『今日、小さな小さな登山者が来た。傷を負っていたが、元気になって夜明けと供に走り出して行った。がんばれ、小さな小さな登山者よ』
これだけの話なんだけど、こっちの方がぐっとくるのは確かで、さて「アリエッティ」には何が足らんかったかな、と考えてしまった。

ホントは『告白』を観に行ったんだけど、既に満席で観られず、せっかく来たのに帰るのも悔しいから、かろーじで席の取れた本作品を観た次第。くぅ~、『告白』が観たかったよぉ!くやしーい!
帰宅してからはせっせと「ちぎり」の続き。とりあえず「次の絵の続き方」が出てきてくれたことにちょびっとほっとする。この調子でいいタイトルも出てきて欲しいんだけど。
Commented by ネイル屋はりねずみ at 2010-07-21 23:54 x
告白、見てきたよ。見たら、感想が聴きたいから、教えてね。
Commented by 雪丸 at 2010-07-22 00:54 x
ネイル屋ハリーさん、行ってきたですか、「告白」。いいなぁ。後味がよくない、みたいな話は聞いたのだけど、原作からしてそーなので、そこらへんはあまり気にしてないのだけど、いかんせん時間が…月内に行けたらいいのだけどねぇ(--)
Commented by ネイル屋ハリー at 2010-07-23 14:51 x
期待ゼロと言うか、何も知らなかったから、楽しめました。だから見たら、感想を教えて!と思っています。日本も、こんな映画が作れるようになったのだなと思いました。
Commented by 雪丸 at 2010-07-24 00:10 x
ネイル屋さん、どもです。『嫌われ松子の一生』の監督だから、暗い話でもそれなりに楽しめる作りになってるのだろうな、とは思ってます。もちろん行ったら感想書きますよー。
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by yukimaru156 | 2010-07-20 01:59 | 行った観た読んだ | Comments(4)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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