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№6 全9巻  あさのあつこ著

古今東西、「男2人が主人公」の話は山のよーにある。コンビ、パートナー、好敵手、切磋琢磨しあうものから水と油、最後まで相容れないものまで多種多様で、そこに腐ジョシの横縞が入るといわゆる「BL」てやつになる。(BLとは何ぞやとゆーと、「友情より密着(粘着?)してるモノ」とでも言っておきますかねぇ。もっと具体的に書いてもいーんだけど、生理的に受けつけない、至極真っ当な方も多いと思われるので割愛します。ちなみに雪丸は「おもしろけりゃいーわい」て位置にいます)

さて、「№6」。徹底した管理社会であって、治安的にも物質的にも、あらゆる意味で「理想都市」と呼ばれる近未来都市の総称。高くそびえる市庁舎を中心に高い塀に囲まれた街で、その中でもさらに優秀なエリートたちが住むのが「クロノス」。ここの住人で、2歳児健診でエリートとして認定された少年、紫苑は12歳の誕生日の嵐の夜、窓を全開にしていて逃亡者であるネズミと出会う。第一級犯罪者として追われるこの手負いの少年を、彼は同情心というよりは好奇心で助ける。そして翌朝、ネズミは消え、代わりに紫苑はエリートの称号を剥奪され、クロノスを追われてしまう。
数年後、エリートではなくなってもさして気にせず、むしろ下町に住み、公園管理人としての生活をそれなりに楽しんでいる紫苑の目の前で「人体から蜂が羽化し、それによって寄生されていた人間が死にいたる」という事件が起きる。単なる目撃者であるはずが殺人者として追われる紫苑。そしてまるで全てを見透かしていたかのように突然現れ、彼を救うネズミ。2人は、ネズミの住む「塀の外」へ出るのだが、紫苑もまた蜂に寄生されていることがわかる…。

いちお児童書ってことなんだけど、そもそもその境界線てのはどこなんだろ、と思う。でもさして難しい話ではなく、SFと呼ぶほどのレベルでもない(気がする)。理想都市として完璧な№6が実は「管理して着飾ってるだけの張りぼて」だ、ということがやがて明らかになって(んじゃ№1~5はどーなんだ?と思うけど、ただのひとこともそういう話は出てこない。紫苑の友人の沙布が留学する話があるけど、それってどこへ?と突っ込みたくなる)、寄生蜂の謎とともに物語は目まぐるしく展開する。そこへ入ったら2度と出てくることはないと言われてる強制収容所、何やら胡散臭い研究所、その所長と幼馴染の№6の市長。ネズミとはビジネスライクな付き合いでしかなかったはずのイヌカシ、紫苑の母の火濫と古い友人である力河、収容所に囚われる沙布と、そして「森の民」とエリウリエス。これだけの素材を揃えて“こんなモンか…”と思えてしまうのが残念。結末に意外性も何もないし。
娯楽小説として読むにはいろいろ物足りなさ過ぎで、説明不足も甚だしく、突っ込みどころ満載。展開が早いのでそれなりに楽しく読むことはできるのだけど、「強制収容所」にしろ「森の民」にしろ、そして「寄生蜂」にしろ、ストレートすぎる、てことかなぁ。だから児童書?う~む。まだ「ダレン・シャン」の方が意外性もわくわくもどきどきも詰まってた気がするわ。

そしてSFだかファンタジーだか何だか…て話で冒頭の「BL」にたどり着いたりしてしまうわけだな。作家がどの程度意識してるのかわかんないけど、紫苑のネズミに対するキモチってのは「命の恩人」とか「友情」とか、そんなモンじゃあないのよね。も、まごーことなき「恋情」。指先の優雅さに見惚れようが、横顔の美しさに絶句しよーが、歌声に涙しよーがどーでもいーんだけど、友情ではなくそれ以上のものだ、という自覚も葛藤もないまんま、『全てが終わったらネズミと母さんと沙布とみんなで暮らそう』って、どんだけ天然?誰にも頼らず、それなりの自由を楽しみながらも「№6の破壊」を常に願い、意識してきたネズミの生き方にはわかる部分が多いから、そこに紫苑みたいな「頭脳明晰な天然坊や」が加わったことによる化学反応は決してつまんなくはないのだけどさ。この作家は、ただ単に「こういう2人」を書きたかったがために物語を作ったんではないかな、と思う。『バッテリー』もだけど、「ここまで引っ張ってそれか!」とか「だから何?!」とか「つまり何が言いたかったの?」とか、そういう感想になってしまう本を書く人、てイメージが定着してしまいそーだ。
しかし何だ、「BLって何?」と思う少女たちがこれ読んでそっち行くよーなことになったらちょっとヤだな。こんな半端な恋沙汰じゃなくて、きっちりすっきりな熱い友情描いて欲しかったよ。

アニメの方を先日やっとラストまで見れて、上手く端折りながら丁寧に描いてるなとは思ったんだけど、原作読まないでこれ見てわかったのかなぁ…と思うこともちらほら。そこんとこ書くと結末書くことになるんでやめとくけど。でもやっぱ、紫苑にはちょっとイラっとするわ。
原作ファン、アニメファンの方、ごめんなさいね。感想は人それぞれってことで。
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by yukimaru156 | 2012-08-21 02:44 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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