人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ルソーの見た夢 ルソーに見る夢

~12/10(日) 世田谷美術館

初めてルソーの絵を見たのは中学の美術の教科書でだったと思う。『蛇使いの女』で、結構衝撃的だった。鬱蒼としたジャングルに真っ黒なシルエットの女性。彼女の横笛に誘われて現れた3匹の蛇。いわゆるフツーの絵画、静物画とか肖像画ではなく、かといってアニメや漫画でもない。でも女性の瞳だけがこちらを凝視してる感じとかは(シルエットなのに目だけが見えるなんて妙だし)、漫画みたいに思えた。あるいはファンタジーの挿絵とか。以来、彼はあたしのお気に入りの画家になった。

税関職員として働いてた彼がなぜ40になって絵筆を取ったのか、実はわかっていないらしい。49になって仕事を辞めて絵に没頭するも生活は困窮を極め、借金しまくって絵の具代不払いで訴えられたりしてる。展示会に出品すれば嘲笑され、酷評され、肖像画を描けば怒ったモデルに絵を引き裂かれたり弾丸打ち込まれたりしたそーだ。おーこわ。
でも彼は描き続けた。セザンヌやゴッホと時代を同じくして、ピカソの部屋で彼の絵を観た藤田嗣治は『絵とはかくまでも自由なものなのか!』と叫んだと言う。(そー本人があちこちに言いまくったらしい) いろんな画家たちが彼の絵を賞賛してたけど最期まで不遇だった、ってのは切ないなぁ。まあ、ゴッホだって死ぬまでに売れた絵はたった2枚だったわけだけど。

実を言うと、彼の絵はもっとあるもんだと期待してた。○○美術館所蔵展とか、印象派展、素朴派の画家たち展といった展示会で観る機会はあっても、ルソー展というのはなかなかない。印象派の画家たちはしょっちゅうその名を冠した展覧会やってるのに。そういう意味でも物足りなさを覚える展覧会だったのだけど、思いがけない収穫もあった。
松本竣介作『立てる像』。図録でしか観たことのないこの絵を、すっっっっごく観たかったのだ!!!まさかここで観られるとは思ってもいなかった。36歳で夭折した画家は、多くの画家たちのようにルソーを敬愛していて、この絵はルソーの『私自身 風景=肖像』に着想を得たものらしい。構図は同じものの、すっくと立つ青年の姿勢と、虚無感を漂わせつつも凛とした瞳に吸い寄せられ、しばらく動けなかった。大戦中に描かれた絵であることもまた、感慨のうちだと思う。いい絵なのだ、ほんとに。

世田谷美術館は用賀駅からちょっとあるのだが、ちろちろと流れる人工の小川(夏になるとちびっ子たちがこの水でぴちゃぴちゃと遊ぶ姿に会えて微笑ましい) のある遊歩道は、歩いていてとても気持ちがいい。黄色や橙色の葉っぱが石畳の雨に濡れ、顔をあげると深い緑がトンネルを作ってる。砧公園は紅葉していて、薄曇の中でも充分美しかった。中にひとつ白い花をつけてる木があって、何かと思って近づいたら「10月サクラ」の札がかかってた。そんな名の桜があることを知らなかった。しかも花まで見られるなんてしあわせ。
お金なくても胸いっぱい、ほくほくできたいい日だった。ルソーについては書き足りないけど、またそのうちに。
名前
URL
削除用パスワード
by yukimaru156 | 2006-11-29 00:17 | 行った観た読んだ | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


by yukimaru156