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深夜特急(ミットドナイトエクスプレス) 天涯へ 

毎年クリスマスイヴの夜、深夜零時から作家の沢木耕太郎による『ミッドナイトエクスプレス 天涯へ』というラジオ番組が放送される。今年で10年目だそうだ。初めて聴いたのは6~7年くらい前だったと思う。そのときは“このときだけの特別番組なのだろう”と思ったので続けて聴くことはなく、ちゃんと聴くようになったのは3年前から。ちょっと勿体ないことしたと思う。
彼はDJではないのだけど、選曲とか(これはまあ、スタッフによるものだと思うけど) リスナーとのやり取りとか、あるいは彼らのfaxやメールがよくて、3時間はあっという間だ。これを書いてるのは番組を聴いた直後。聴きながら書こうと思ったがやっぱり無理だった。一体どーやって「聞きながら書く」ということができるのだ、みんな?書いてたら何も耳に入ってこないじゃないか。(でも昔はちゃんとヒアリングのテストとかやってたわけだから、出来なくはないはずだよなぁ)

で、実は昨年、この番組で「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」なるものが立ち上がり(これはアメリカで出版された本のタイトルで、市井の人々の実話集)、原稿が募集されて無謀にもあたしは原稿を送ったのだ。締め切りまで1ヶ月だったが、以前書いた、紀行文とも何とも言えないモノを書き直して。(これを引っ張り出して読んだときの恥ずかしさといったら!何てへたっぴなんだと自分をののしった!) とても満足できるモノではなかったが、ラジオを聴きながら「送ろう」と思ったのだから送るのだ、というよくわかんない理由で白い原稿用紙に向き合った。

昔ネパールを訪れたときに出会った、ソムコという少年の話だ。物乞いの子供たちに混じっていた彼は、とても「浮いて」いた。他の子たちと同じようにルピーをせがむことはなく、描いてるスケッチ(この頃から旅絵日記を描き始めてた)を覗き込むこともなく、そして絶対笑わない。そんな彼が、日本語で話しかけてきたのだ。12、3歳で英語を話す子さえ稀なのに、彼は英語も日本語も流暢だった。自分から話しかけてきたくせに愛想がなさすぎで会話に困った記憶がある。

『日本語、うまいんだね』
『うん、みんなそう言うよ』
『大物になれるよ。大物ってわかる?偉い人とかだけど』
『わかる。そのためには勉強が必要だけど、ボクには本を買うお金がない』

とどのつまりは金なんだよな、と思ったけど、「くれなきゃくれないでいいんだ」と目で語る彼の、ふてくされた表情に逆に動かされるものがあって、あたしは咄嗟にルピー札をちっちゃく畳んで、他の子たちに悟られないように(知られたらみんなに渡さなきゃならなくなるので) 素早く手渡した。
『約束して。これで本を買うって』
『わかった』
彼はにこりともせず、お金をポケットにしまうと、振り向きもせずに去って行ってしまった。何だかバカされたような気分になったのだけど、後日彼がフツーの少年たちと笑いながら道を歩いてる姿を見かけて、ああいう笑顔が出来るんならまいっか、と思った、という話。

ホントにあった話を物語るというのは想像以上に難しい。(沢木サンはすごい!と改めて思う) どこから始めてどこで切り取るのかの判断が、おそらくは架空の話を構築してくより見極めにくいのだ。何を語れるのか、というのもある。ここにこーして書いてはいるけど…ねぇ?

ソムコはどんな大人になったかなぁ。


ちなみに番組のサイトはこちらで。
http://www.j-wave.co.jp/special/sawaki2006/
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by yukimaru156 | 2006-12-25 04:04 | 我思う | Comments(0)

ちぎり絵ざっか作家 さゆきの  雑記帳


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